そのままの君が好きだよ
「けれど……けれど陛下は、わたくしを殿下の妃にとお認めくださいましたわ」


 言いながら、わたくしはそっと前に出る。
 わたくしが殿下の婚約者になったのは今から四年前。殿下のおばあ様がご健在で次の聖女がまだ誕生しそうにないこと、隣国の王女を母に持ち、当時から勉学に秀でていたわたくしが妃に適任だと、王室に請われたのがその理由だった。


『新たに聖女が誕生したとしても――――次期王太子妃にはディアーナが適任だろう』



 陛下はそう、わたくしにお言葉を下さった。光栄だった。幼心に、涙が出るほど嬉しかったことを今でも覚えている。

 とはいえ、伝統を覆すことは一国王であっても中々に難しい――――だからわたくしは、陛下のご期待に沿うための努力は欠かさなかった。妃教育は当然のこと、文官志望の男性たちと同じ試験勉強をし、私設騎士団に混ざって訓練を受けてきた。力では男性に敵わないものの、弓矢の腕だけならわたくしは誰にも引けを取らない。有事の際に、城を守れるだけの力が欲しかったからだ。


『ディアーナは僕よりも余程優秀だね』


 殿下もそんな風に、わたくしのことを認めてくださっていた。それなのに――――。


< 3 / 57 >

この作品をシェア

pagetop