そのままの君が好きだよ
(ダメよ……何のために殿下が時間を割いてくださったと思っているの?)


 サムエレ殿下は何度も何度も『わたくしのせいではない』と、そう口にしてくれた。どうしようもない程自己嫌悪に陥ったわたくしを、ずっと肯定し続けてくれた。この数日間、彼の言葉にどれ程救われたか分からない。


(わたくしは――――わたくしのままでいたい)


 ジャンルカ殿下には否定されてしまったけれど、これまでの人生で築いてきた自分という人間を保ちたい。そう強く思った。


「――――ごめんなさい……力になってあげたいのだけれど、わたくしは事情があって王宮に行くことが出来ないの」


 言いながら、声が震えてしまう。
 怖かった。これ以上ロサリア様に追及されたら、わたくしは自分を見失ってしまいかねない。心臓がドキドキと鳴り響く中、ロサリア様が怪訝な表情で首を傾げる。
 けれどその時、誰かがわたくしの肩を優しく叩いた。サムエレ殿下だった。


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