そのままの君が好きだよ
「平気ですよ、ロサリア嬢。当日までの間に、官女たちがサポートに伺うそうですから」


 サムエレ殿下がそう言って穏やかに微笑む。ロサリア様の表情がみるみるうちに明るくなった。


「サムエレ殿下! それは本当ですか?」

「ええ、もちろん。いきなり王宮に呼ばれても、普通緊張しますよね」

「そうなんです。良かった……私本当に不安で」


 そう言ってロサリア様はホッと胸を撫で下ろす。


「――――頑張ったね」


 その瞬間、サムエレ殿下がわたくしの耳にそう囁きかけた。目尻に涙が滲む。

 ロサリア様とのやり取りはたったの数分間。他人から見れば他愛のないやり取りだったのかもしれない。
 けれど、わたくしにとっては物凄く長い数分間だった。ずっとずっと、崖のふちに立たされているような心地だった。そんなわたくしの頑張りをサムエレ殿下は認めて下さった。そのことが、あまりにも嬉しい。


「頑張りました……」


 誰にも聞き取れない程、小さな声でそう呟く。そんなわたくしの背中を、殿下が優しく撫で続けた。
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