そのままの君が好きだよ
「本当に……可愛いよ、ディアーナ」


 けれど、殿下はもう一度、噛みしめるように言葉を重ねる。
 ふと顔を上げれば、サムエレ殿下は真剣な表情でわたくしを見つめていた。これを『ただの社交辞令』だと思いこむのは中々に難しい。


(こういう時、なんて返せば良いんだっけ)


 そんな当たり前のことすら分からなくなるほど、思考回路がおかしくなっている。胸の中で小さな火種が燃え上がって、心の中をチリチリと焼くような、そんな心地がする。チラリと殿下を見上げれば、彼はとても嬉しそうな表情で笑っていた。その瞬間、先程までの逡巡が嘘のように、ストンと言葉が降りてくる。


「あっ……ありがとうございます」


 素直にお礼を口にすれば、サムエレ殿下は更に嬉しそうに目を細めた。その表情に、何だかこちらまで嬉しくなってくる。

「ねぇ……ディアーナは今夜、俺のためにオシャレをしてくれたんだよね?」


 殿下はそう言って小さく首を傾げつつ、そっとわたくしの顔を覗き込んだ。
 尋ねている癖に、彼の瞳は確信に満ちていた。キラキラと熱を纏って揺れる青い瞳から目が離せない。恥ずかしさのあまり、わたくしはギュッと自分を抱き締めた。

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