そのままの君が好きだよ
「勝手にディアーナとの婚約を破棄したこと。四年も婚約していたのに、聖女が現れたからという理由で一方的に破棄するなんて間違っている。王族との婚姻が伝統なのだから、相手はサムエレで良かっただろう……って。
そもそも、婚約破棄自体が事後報告で――――僕の口からではなく、サムエレから報告を受けたってことで、大層な怒り具合だった」

「そ、れは……」


 それらの可能性についてわたくしは、ジャンルカ殿下に事前にお伝えしたはずだ。けれど殿下は、まるで『指摘しなかったおまえが悪い』とでも言いたげな表情で、わたくしのことを睨んでいる。


「――――それでも陛下は、一応矛を納めて下さったんだ。既に破棄したものは仕方がない。ロサリアと婚姻を結べれば、責任は不問にすると。
だけど今度は、ロサリアの方が問題だった。驚くことに、彼女には密かに結婚を約束した恋人がいたんだ。王太子であるこの僕の……僕のプロポーズを…………あの女は無下に断った」


 そう言って殿下は声を震わせる。怒りのせいか、瞳が真っ赤に血走っていた。荒く呼吸を繰り返し、ニヤリと口角を上げた彼は、酷く狂気じみている。反射的に数歩後退ると、ジャンルカ殿下はすぐにわたくしを追いかけた。


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