色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

バニラとお出かけ

 出かける用事があるとすれば、週に2回。
 スズランとルピナスの2人にピアノを教えに行くだけ。
 ごく、たまにローズ国王に出くわすことがあるのだが、
 挨拶をして終了。

 環境に慣れてくると、だんだん飽きてくるもので。
 ピアノの練習が嫌になってきた頃。
 ご近所さんに何かお店がないのかと思った。
 講堂と家を行き来するのも、少しばかり飽きてきた。
「ねえ、バニラ。ここら辺は店ってないのかなあ」
 朝食後、紅茶を飲みながらバニラに尋ねる。
「お店はないですねえ」
 きっぱりと言われて、ちえっと口を尖らせる。
「そういえば、食糧ってどこで手に入れてるの?」
 バニラはガーデニングに興味があるのか、家の前にある庭でハーブを育てているのは知っているけど、日々の食糧はどのように手に入れているのか。
「食糧は移動販売の方が来て欲しいものを言えば持ってきてくれるんです」
「移動販売!? 凄いね。進んでるねえ~この国も」
 軽く馬鹿にしたように言ったけれど。
 スカジオン人からすれば、この国の文明は遅れている。
 電気・ガスがない上、スマホなんかの電子機器さえないこの国は、魔法も使えない。
 自分一人だったら、生活出来なかっただろうけど。
 家事・食事はすべてバニラがやってくれているので、私は困ることがない。
「あーあ。娯楽が欲しいわ。ピアノだけっていうのも飽きてくるし、同じ人と会話するだけってのもつまらない」
 文句を言っていると、バニラはすっと目の前にリンゴを置いた。
「では、騎士団の稽古でも一緒に見に行きますか?」
「稽古?」
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