色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅲ

ルピナスの秘密

 毎日が、たらたらと過ぎて行く。
 平和で穏やかで、逆に言えば刺激的なことなんて一つも起こらない。
 スズランとルピナスにピアノを教え、
 家に帰れば、ピアノを弾き続け、
 時にバニラと近所を散歩して、騎士団の練習場を見に行ったり、カスミさんの屋敷のほうへお邪魔させてもらったり、逆にカスミさんを我が家に招いたり…

 スズランたちにピアノを教えに行く際、たまにローズ様に出くわすのだけど。
 話すとすれば挨拶程度。
 国王は忙しいわけで…
 それよりも、太陽様の顔を見ていない。
 仕事が忙しいのか。わざと避けているのか…

「諸事情の為、今日のレッスンにスズラン様は来られません。失礼します」
 突然のドタキャン。
 愛想すらない、感じ悪い侍女に言われて「そうですか」と呟く。
 ルピナスには一度もドタキャンされたことはないけど。
 スズランに関しては2~3回、ドタキャンされる。
 しかも、当日。礼拝堂で待っていたら急に言われる始末。
「もっと早めに言ってくれないかなあ」
 ちえっと舌打ちをして。
 カバンに楽譜をしまい込む。
 片付けを終えて、礼拝堂を出ると太陽の光がギラギラと眩しい。
 馬車乗り場まで、ゆっくり歩こうとすると。
 いきなり足元を誰かにタックルされて、身体がぐらりと傾く。
 下を向くと、ルピナスが、がっちりと足をつかんでいた。
「え、ルピナス様!?」
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