Restart〜二度目の恋もきみと
すると、事務所のドアがノックされて
「こんにちは。
サンテック沢北です」
男性の声が聞こえてきた。

いけないっ
今は仕事中だ。

桜良は伏せていた身体を起こすと
事務所のドアに目を向けた。

しかし、ドアの前に立つ
その見覚えのある顔に私は
顔を青くした。

「こんにちは。仁坂さん。
わざわざご足労いただきまして
ありがとうございます。」

黒木さんが呼んだ名前に
私の心臓はドッドッドッと更に早さを増した。


黒木さんは仁坂の顔を
見てすぐに立ち上がると
「応接室にどうぞ」と堤を
奥の応接室へと案内する。

そして黒木さんは私に向かって
「桜良ちゃん、珈琲二つおねがいできるかな?」と言って指を2本立たせて見せた。

黒木さんの隣に立つ仁坂が
私の方に目を移したので
私は咄嗟にその視線から避けるように
「はい。畏まりました」と
給湯室に逃げ込んだ。

私は給湯室に駆け込むと
ヘタリと崩れるように
その場にしゃがみ込んだ。


先程の仁坂は私の中学生時代の同級生で
私を虐めていた主犯格の男子生徒だ。

もう二度と会うことはないと思っていたのに...

私はガクガクと震える手を抑えるように握った。



でも、仁坂は私を見ても顔を変えることはなくきっと気づいてはいないだろう..

もうあの人とは関わりたくない。

このままどうにかあの人に気付かれずに
やり過ごしたい。
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