ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
「お嬢ちゃん。彼氏とデートかい?」
「えっ、あの」
(そんな風に見えるのかな?!)
「…………は?」
(…………ですよね~)
たしかに、街を歩いていても違和感のないように、最近街で流行っているワンピースに身を包んだ私は、庶民に見えることだろう。
だから、そんな氷点下の瞳を、露店のご主人に向けてはいけません。アルベール……。
「…………」
「アルベール?」
固まってしまったご主人を一瞥し、言葉を発することもないまま、私の袖口に飾られたリボンを目にしたアルベールが手にしたのは、たった今見つめていた青いビジューが付いた髪留めだった。
その髪留めをつまんで、しげしげと袖口のリボンと見比べた後に、値札に書かれた値段にいくぶんか色を付けて、料金を支払ったアルベール。
誰かにプレゼントするのだろうか? なんて、ぼんやり眺めていたら、なぜかその直後、私の髪の毛には、その髪飾りが飾られていた。