ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
アルベールと出会ってから、数日間のことを思い出す。初めは会話らしい会話があったのに……。
やっぱり、よほど嫌われてしまうようなことをしてしまったのだろう。
その理由が、思いつかない上に、返答が一文字以外は、よくしてくれているので、申し訳なさしかない。
「おはよう、アルベール?」
年中無休のアルベール。
休みをとってほしいと伝えたのに、困った顔をされてしまって、それ以上言うことができなかった。
「………………おはようございます」
「え?」
少し潤んだ瞳が、私を見つめていた。
聞き間違いだったのだろうか。
それとも、挨拶を返してもらえたら、うれしいと思い続けた私の妄想だろうか。
「あ、えっと。薔薇の花に水をあげに行くわ」
「……は」
あっ、やっぱり聞き間違いだったのね。
けれど、やはりその日のアルベールは、おかしかった。
「アルベール」
「は」
「水をあげ終わったわ」
「ええ……」
ん? やっぱり、いつもと違う。二文字。
そういえば……。
アルベールの顔が赤いことに、ようやく気がついた私は、そっと、その額に手を当てた。
前髪を避けて触れると、ギュッと目をつぶるアルベール。
予想通りアルベールの額は、熱を帯びていた。
「熱……あるわ」
「問題ありません」
大ありだ。熱があるのなら、他の騎士に護衛なんて代わってもらえばいい。