ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

「そ、そこまでブラックな職場じゃないですよ?」

 私が触れていた手を、そっと握ってどけると、「嫌です……」とアルベールがつぶやいた。

 あれっ? そういえば、普通に会話している?

「えっと……。じゃあ疲れたから部屋で休みたいの!」
「…………は」

 私は、アルベールの手を引いて、部屋へと戻る。
 そして、アルベールを無理やりソファーに押し倒した。

「…………あれっ?」
「…………」

 手首を掴んで、アルベールを押し倒している私は、とんでもないことをしでかしているのではないだろうか。

 こういうところなのだろう。
 アルベールに嫌われてしまうのは。

「そのまま、少し休んでいなさい」
「…………お嬢様」

 アルベールは、私には名前を呼べと言ったのに、私のことは、お嬢様と呼ぶ。……いや、それすら必要に迫られて呼ぶ時だけ。
 そんな私たちの距離感は、どこか歪だ。

「命令よ。休めないというなら、隣の部屋に」
「…………いてほしい、です」

 高い熱、こんなになるまで、いったい何をしていたんだろう。
 まあ、確かに心細くなるよね。

「夢なら、せめて側に」
「え?」

 その瞬間、私の目は、アルベールの微笑みに釘付けになっていた。

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