ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

 そういえば、不思議だった。
 先日起こった、ある事件の後に、アルベールは、私の護衛として選ばれた。
 その時に、アルベールの経歴書を見たけれど、驚くほど華々しいものだった。

 王立騎士養成所を首席で卒業し、王立騎士団に入って頭角を現したアルベール。
 そのまま、出世していけば王族の近衛騎士にだって、騎士団の上層部にだって入れると言われていた。

 それなのに、ある突然、王立騎士団を辞職して、辺境伯家の騎士団への入団を志願。
 実力派の若手騎士が、魔獣との防衛ラインでもある辺境伯騎士団に志願すること自体はある。

 けれど、最前線で戦うはずの辺境伯騎士団に所属していながら、アルベールの位置づけは、私の護衛騎士という微妙なものだ。

「…………私の護衛なんてしていたら、アルベールのしたいことが出来ないのでは」

 早朝から、私が眠るまで付き従っているアルベールは、訓練だって欠かさないというのは執事のセイグルからの情報だ。今回のことだって、過労がたたったに違いない。

 離してくれない手と、いつものアルベールが、私の頭の中をぐるぐると混乱させる。
 もうすぐ、辺境伯領は今まで起こったこともない大災害に見舞われてしまうことも。
 アルベールと三年もの間、離れることになることも。

 そのあとの再会も、まだ私はあずかり知らない。
< 21 / 45 >

この作品をシェア

pagetop