ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
上目遣いの破壊力が、ものすごく高い。
だって、いつもの冷たすぎる瞳との、温度差が大きすぎる。
どうして、いつも私とは会話すらちゃんとしてくれないくせに。
普段いったい誰に、そんな顔を見せているの。
私に関係ないのは、分かっているけど……。
「……は」
息が苦しくて、言葉を発することが出来ない。
口からようやく漏れ出したのは、小さな息だけだった。
そして、今度こそアルベールは眠ってしまったらしい。
私の手を、子どもみたいに握ったままで。
熱い手を振り払うことが出来なくて、私はアルベールが眠るソファーの横に座り込んだ。