ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

 ***

 転移魔法陣がアルベールを連れて行った先は、まさかの王太子の私室だった。
 王太子ロータスは、まるでアルベールが今から来るということを知っていたかのように、ソファーに優雅に座っていた。

「――――危機管理があまりになっていないのではないですか? ロータス殿下」

 そんなことを言ったのに、振り返ったロータスは笑顔だった。

「君が俺を殺そうと思ったら、別にどんな場所からでもそれができる。それなら、手っ取り早くこの場に呼んだほうがいいという判断だ」
「恐悦至極に存じます」
「やめなよ。君らしくない」

 茶色の髪と瞳、平凡な色に生まれた王太子ロータスだが、その顔は甘く美しい。
 しかし、側妃の子でありながら、ほかの王位継承者を押しのけて、王太子の位置に上り詰めた彼は、目的のためには手段を択ばない。
 それでも、アルベールとロータスの間には、間違いなく友情というものが存在する。

 それは、二人が似た者同士だからなのか。
 それとも、神に与えられたと言われるほど、お互いが高い能力を持つが故か。
 ……二人の持つ孤独の運命のせいか。
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