ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?
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転移魔法陣がアルベールを連れて行った先は、まさかの王太子の私室だった。
王太子ロータスは、まるでアルベールが今から来るということを知っていたかのように、ソファーに優雅に座っていた。
「――――危機管理があまりになっていないのではないですか? ロータス殿下」
そんなことを言ったのに、振り返ったロータスは笑顔だった。
「君が俺を殺そうと思ったら、別にどんな場所からでもそれができる。それなら、手っ取り早くこの場に呼んだほうがいいという判断だ」
「恐悦至極に存じます」
「やめなよ。君らしくない」
茶色の髪と瞳、平凡な色に生まれた王太子ロータスだが、その顔は甘く美しい。
しかし、側妃の子でありながら、ほかの王位継承者を押しのけて、王太子の位置に上り詰めた彼は、目的のためには手段を択ばない。
それでも、アルベールとロータスの間には、間違いなく友情というものが存在する。
それは、二人が似た者同士だからなのか。
それとも、神に与えられたと言われるほど、お互いが高い能力を持つが故か。
……二人の持つ孤独の運命のせいか。