ところで、政略結婚のお相手の釣書が、私のこと嫌いなはずの『元』護衛騎士としか思えないのですが?

「まさか、君が恋に落ちて、それを最優先するなんてね?」

 ロータスの言葉は、からかい半分、残りは何故? という本心からの疑問を含んだものだった。

「そうですね。俺も、今でも、信じられないです」

 むしろ他人に興味が持てなかったアルベール。
 おそらく、魔女の呪いのせいで、誰かを好きになってしまうような関係の構築を無意識に避けて来たのだろう。

「まあ、俺はどちらでもいい。生き残って英雄になれ。それだけが俺の命令だ」
「御意」

 もちろん、その後の大会で圧倒的な実力を見せつけて優勝したアルベールは、王太子ロータスにより選抜隊の指揮官に任命された。

 旅立ちの朝、自ら見送りに来た王太子は、未来の英雄の背中を見送る。

「しかし……。コースター辺境伯令嬢から贈られたあのブローチ。アルベールは、気がついていないようだが、あんな品物贈られるなんて、間違いなく相思相愛じゃないか」

 王太子ロータスの言葉は、誰にも届かずに消えていった。
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