君に、ブルースターの花束を
「他の男が婚約者だったら、泣いてもらっていたかもな」

そう言い、ジークフリードは懐から取り出したタバコに火をつける。煙をぼんやりと見つめながら、ジークフリードの頭の中にソフィアと初めて出会った時のことが何故か思い出されていた。



ジークフリードの家は、代々陸軍に所属している軍人家系だ。陸軍大佐にまで上り詰めた曽祖父は戦場で戦死し、同じく大佐だった祖父も戦場で戦死し、中佐だった父は命こそ助かったものの、両足を爆撃により失い、退軍せざるを得なくなった。

そして二十八歳のジークフリードは、父たちと同じ陸軍の道を歩き、少佐という地位を得ている。そんなある日、休暇を貰って家に帰った際に父から言われたのだ。

「お前の婚約者が決まった。今夜会うから、支度をしておくように」

突然婚約者と言われたことに、ジークフリードは動揺することはなかった。バイルシュミット家は、代々結婚相手は親に決められている。曽祖父も、祖父も、父も、みんな政略結婚だった。
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