遠き記憶を染める色

⑩幼き疼き

幼き疼き



”このまま、サダト兄ちゃんに抱かれていたい…”


潮田流子はもう、この時点で血の繋がっていない親類の少年を愛してしまったのかもしれない。
さっきまでは、ほのかな恋心だったであろう。
だが、サダトの告白で、彼女は自分自身の深いところに目覚めたのだ。


あの3年前の出来事は、同じ船上にいた流子も、サダトと海との深い交わりを、いわば共有したと言える。
なにしろ流子は、サダトの”生まれ変わり”が理解でき、受け入れられたのだ。


そしてサダトも、流子が自分の心の変転を理解してくれることを疑わなかったし、それを享受してくれた彼女には、愛する気持ちが確信できた。
一方で、まだ中学1年の流子のことを、ディープな恋愛相手には据えられなかった側面は確実に存在していた。


***


それはサダトが海によって、愛し方と愛され方の根本を変換させられた自覚によるところからだったのだが…。
当の流子もそれをまた、この場で真の理解まで達したことで、彼の思いは承知できていたのだ。


よって、19歳と13歳の二人はまだ未成熟ではあったが、この時点での等身大な愛では繋がったのだ。
確かに…。


とは言え、性に目覚めた年齢に達していた流子は、淡い口づけで体が疼いたのも事実だった。
長い接吻の間、両腕を互いの背に添えあい、必然的に二人の体はくっついていた。


流子の張りのある片方のバストはサダトの胸に触れて、微妙にその突端が擦れる。
まだ”コドモ”の自分を自覚し、”その先”までは時期尚早と頭でわかってはいても、今の流子は体の芯が疼くのを抑えることができなかった。


***


”もうすぐサダト兄ちゃんはテレビに出て、有名人になるんだ。そうなれば、アイドル歌手とかモデルとか芸能人の彼女ができるよ。それは仕方ない。でも…、この人のことを一番知っているのは私だよ…!”


おそらくは、こんな思いと焦燥感が流子の中で交錯していたのだろう。
サダトに、そんな少女の切ない胸の内をどこまで見えていたのか…、それは定かではない。


優しい陽射しを受けながら、互いの唇を離した後もサダトは流子の肩を抱き寄せ、二人は静かに海を見つめていた…。


「…流子ちゃんを守りたい気持ちで愛してるってことは、キミを大切に思うってことだからさ…」


「うん…」


流子はサダトの気持ちが十分伝わったので、”それ”を納得はした。
だが、どうしても”不安”がつきまとうその感覚が怖かった。


”これからはめったに会えない。このままで終わっちゃったらどうしよう…”


これ以降、流子はこの不安感がどっと重くのしかかる日々を送ることとなるのだが…、同時にそれは、高まる性欲との対峙も同居させたものでもあった。



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