*夜桜の約束?* ―再春―
 凪徒が初めてモモに出逢ったのは、二十一歳になりたての頃、モモはまだ十五歳少し手前だった。

 ──その時は明らかに『中坊のガキ』だと思っていた筈であるし、昨春出た自分の答えは『相棒』の二文字だった。昨夏には『腹違いの妹』だとばかり思っていた訳だし……? でもロシア行きが決まった際には「そんな『目の前にエサぶら下げられた状態』なんて地獄だ!」と思っていたのは間違いない……。



「まさか……あいつをパートナーとして選んだのはこの俺だ。今更あいつの良いところに気付いたりなんてしない」



 先月相対した洸騎に向けて発した言葉。

 凪徒はいきなり思い出された自身の台詞(セリフ)に、ふっと天井を見上げ考えを巡らせた。

 ──結局、俺はモモの舞に、初めから惚れてたってことか……?

「あ~! んなの、どうでもいい!」

 凪徒は独りぼやいて、お次に髪を掻き乱したが──

 ──俺、モモを待つ前にシャワールームで頭洗ったよな?

「もうそれもどうでもいっ!!」

 騒がしい心が鎮まらないまま、洗い立ての黒髪を再び乱暴に洗い出した。



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