*夜桜の約束?* ―再春―
[5段階]
──まったく……こいつの寝姿、もう何度見たんだか……。
すやすやと軽い寝息を立てるモモの目の前に頬杖を突き、凪徒は静かな苦笑いを零していた。
この一年だけでも数回は思い出される。
昨春の誘拐事件の帰り道、モモは凪徒の運転する営業車の後部座席で疲れて眠ってしまった。
夏の失踪事件でも凪徒が戻った夕、会議用のプレハブで、待ちくたびれてテーブルに倒れ込んだ背中を目撃している。
慰安旅行の宴会ではそれこそ凪徒の胸の中で寝入ってしまっているし、ロシアの行き帰りでは隣の座席で気持ち良さそうに休んでいた──が、何も今眠ることはないだろうと、その苦笑は嘆きに変わりつつあった。
そんな矢先──
「あ……せ、んぱい……」
突然モモが言葉を発したが、それは寝言のように思われた。
「先輩、それは……ダメ!」
──おいおい……まさか夢の中で、もう俺とイイコトしてる訳じゃねぇよな?
台詞の内容からつい変な想像に及び、凪徒は固唾を呑んで、モモの次の句に耳を澄ましたが、
「それは……まだ、食べま、す……」
「何だよ、色気より食い気かっ」
思わず荒げてしまった凪徒のツッコミに、モモは目を覚ましてハッと我に返った。
すやすやと軽い寝息を立てるモモの目の前に頬杖を突き、凪徒は静かな苦笑いを零していた。
この一年だけでも数回は思い出される。
昨春の誘拐事件の帰り道、モモは凪徒の運転する営業車の後部座席で疲れて眠ってしまった。
夏の失踪事件でも凪徒が戻った夕、会議用のプレハブで、待ちくたびれてテーブルに倒れ込んだ背中を目撃している。
慰安旅行の宴会ではそれこそ凪徒の胸の中で寝入ってしまっているし、ロシアの行き帰りでは隣の座席で気持ち良さそうに休んでいた──が、何も今眠ることはないだろうと、その苦笑は嘆きに変わりつつあった。
そんな矢先──
「あ……せ、んぱい……」
突然モモが言葉を発したが、それは寝言のように思われた。
「先輩、それは……ダメ!」
──おいおい……まさか夢の中で、もう俺とイイコトしてる訳じゃねぇよな?
台詞の内容からつい変な想像に及び、凪徒は固唾を呑んで、モモの次の句に耳を澄ましたが、
「それは……まだ、食べま、す……」
「何だよ、色気より食い気かっ」
思わず荒げてしまった凪徒のツッコミに、モモは目を覚ましてハッと我に返った。