*夜桜の約束?* ―再春―
「ちょっともう一回座って、脚見せてみろ」

「あ、し……?」

 前側で両腕を突っ張ったまま、モモは言われた通りに腰を降ろした。

 凪徒はベッドサイドにしゃがみ込んで、左脚のふくらはぎを手に取り、まじまじと見つめた。

「脚なんて……練習着と本番はスカートなんですから、いつでも見てるじゃないですか……」

「んなの生足じゃないじゃんかよ。第一ブランコの時に、そんな余裕なんてない」

 ──そ、そうなの? 先輩、本番の前までは楽勝そうな顔してるのに……。 
 
「やっぱりわっかんねぇな~何でこの筋肉量であれだけ跳べるんだ!?」

「あたしも知りたいです……」

 凪徒は数回モモの筋肉を確かめるように指先に力を込めてみたが、相変わらずその辺りの女子みたいな柔らかい脚に首を(かし)げ、丸みのある(なめ)らかな膝頭(ひざがしら)にそっと口づけをした。

「あっ──」

「まぁお陰で杏奈がくれたミニスカも似合ってんだから、ジャージやジーパンばっかじゃなくて、たまにはスカートはけよ?」

「え? あ……はい」

 ──あんな夕闇の一瞬のこと、先輩、覚えててくれたんだ。


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