僕と彼女と傷痕
「━━━━ただいま!」
「おかえり!」

パタパタとスリッパの音をさせて駆けてくる風吹を、抱き締める玄匠。

「風吹、好き」
「フフ…私も!」


中に入ると、キッチンに沢山のケーキやプリン、パフェなどが並んでいた。

「風吹、これ何?」
「うん。
…………玄匠くん、相談があるの」

風吹は、新作メニューの件を玄匠に相談した。

「へぇー!凄いね、風吹!
まだ、社員になって一年くらいでしょ?
もちろん、ずっとバイトとして働いてはいたんだろうけど、それにしても新作デザートのアイディアを任されるなんて!」
玄匠は、嬉しそうに風吹の頭を撫でた。

「やった方がいいかな?」

「うん!僕は、風吹にとってチャンスだと思う。
風吹の二番目の夢に近づける、良いきっかけになるかもでしょ?
だから、受けなよ!
僕も、出きることは何でも協力するから!」

微笑む玄匠に、風吹は心が楽になるのを感じていた。

「ありがとう!
玄匠くんにそう言ってもらえると、気が楽になった!
ごめんね、仕事で忙しいのにこんな……」
「何言ってるの?
僕は、嬉しいよ!
風吹に頼ってもらってるみたいで、嬉しい!」

“心配かけたくないとか、疲れてるだろうからって気を遣われるよりも、助けてって頼ってもらった方が何倍も嬉しい”

風吹は、思う。

そうか。
私が意地になってただけなんだ、と。
自分をさらけだして、助けてってすがることがあってもいいんだ、と。

肩の力が抜けた気がした━━━━━━


「━━━━それでね。試食してくれない?
店長が、男性をターゲットにしたいって言ってて。
玄匠くん、甘いもの苦手ではないけど、あんまり好んでは食べないでしょ?
そんな人にウケれば、いい新作になるんじゃないかと思って!」

「うん!喜んで!」

二人は、夜遅くまで仲良く新作デザートについて語り合った。



そして今は、ベッドのヘッドボードに寄りかかって座っている二人。
「━━━━━玄匠くん、ありがとう!」
「うん」

「食べ過ぎたよね?(笑)」
「ん…正直、気持ち悪い……(笑)」
「だよね…(笑)」
「でも、良い新作できたじゃん!」
「うん。玄匠くんのおかげ!ありがとう!」

「うん!
……………風吹」
「ん?玄匠…くん?」
真剣な眼差しで見つめる、玄匠。

「好きだよ、風吹。
風吹が大好き!
もう、好きすぎてどうにかなってる」

玄匠の顔が近づいて、口唇が重なる。

「ずっと……何があっても、放さないからね……!」
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