僕と彼女と傷痕
真実は、話さない方がいいだろう。
咄嗟にそう思った、風吹。

「フフ…そうなのー
バカでしょ?(笑)」
と、笑って言った。


「━━━━━でも、大変でしょ?」
「うーん。まぁ…そうだけど、呂麻ちゃんが同じ職場だし、何より彼もいてくれるから!」

「そっか…
まぁでも、命が助かって良かったな!
ふぶちゃんに二度と会えないのは嫌だし」

「うん…」

光弥の大きな手が、風吹の頭に乗る。
ゆっくり滑るように撫でられた。

風吹は、光弥の大きな手が好きだった。
光弥の頭のナデナデは、風吹の癒しだ。

でも━━━━━━

(玄匠くんの頭ナデナデの方が好き…/////
………って、私、何を…/////)
そんなことを考えてにやつく、風吹。


「━━━━━風吹!!」

風吹と光弥の、柔らかい雰囲気を切り裂く鋭い声が響いた。

「え?あ、玄匠くん!」
風吹が、嬉しそうに玄匠に駆けよった。

そんな風吹の姿に、光弥は心に凄まじい痛みを感じていた。

「風吹、どうしたの?
てか、あの人誰?」
「ん?あ、彼は━━━━━━」

グッと風吹を引き寄せた、光弥。
腰を抱いて、玄匠を見据えた。

「初めまして!ふぶちゃん彼。
俺は、ふぶちゃんの兄貴みたいなもんかなぁー
ふぶちゃんが生まれた時から知ってるんだ!
いつもふぶちゃん、俺にくっついてたよなー(笑)
あ!一緒に風呂も入ったこともあるしぃ、ふざけてキスしたこともあるかなー(笑)」

「ちょっ…みっちゃん!!」

「ん?でも、ほんとのことだろ?」

「でもそれは、幼稚園の時のことだし……
あと、みっちゃん、離して……」
光弥を押し返す風吹。

「別にいいじゃん!」
更に抱き寄せようとする光弥。


「━━━━━良くないよ」
そこに玄匠が割って入り、風吹の手を取り引っ張った。
そして風吹をそのまま、守るように抱き締めた。

「は?」

「風吹は、僕の恋人です。
兄貴だろうが、何だろうが、勝手に触らないでください」
しっかり光弥を見据え、鋭い声と視線で淡々と言ったのだった。

「………」

冷たい視線で見据える玄匠と、それを真っ直ぐ受ける光弥。
お互いに退かない。



「………フッ…」
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