神さま…幸せになりたい

運命の再会

結局、あまり眠れないまま入院生活5日目になった。いくら若いとはいえ寝不足と栄養不足の生活が続いてて体は悲鳴をあげていた。もう辛い…今日は熱が下がっていた。このままいけばあと数日で退院できるんじゃないか…咳が残るのは仕方ないけど、あと数日、乗り越えないと…そう考えていたら

「川原さん、おはようございます。のぞくん、お熱下がってきてよかったね」西先生がやって来た。
「あっはい。ありがとうございます」

「ちょっと会わせたい人がいるんだけど…いいかな?」
「はい…」誰だろう?と思った瞬間…

「おはよう…詩織?」

「えっ」

何で?亘くんが?頭の中がパニックで、そのまま固まってしまった。

「川原さん…ごめんね。安斎亘。覚えてるよね?」

「……………」

「こんな形で再会させてごめんね。2人でゆっくり話した方がいいから。亘…あとは頼むぞ」

そう言って西先生が出ていってしまった。頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしていいのかわからなかった…どうしてここに亘くんがいるの?望夢の存在を知られてしまった。どうしよう…どうしよう…と思ったとき亘くんの声がした。

「望夢くん、抱っこさせてくれるかな?おいで」
病院に来てからは体調が悪く知らない場所で怖いのか、手を出されても行かずに私にくっついていた望夢が手を伸ばした。

「よいしょっ…重いな」
そう言って笑顔で抱っこしながらソファーに座る亘くんの姿が映った。

望夢が泣かずに抱っこされてるのを久しぶりに見た。でも…自分の腕からその温もりが消えてしまった…私のたった1人の家族…なのに…「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…望夢を取らないで…お願いしますっ…ごめんなさいっ…」咄嗟に口走っていた。

「詩織…望夢は取らないよ。大丈夫だから。謝らなきゃいけないのは俺の方だから謝らないでくれ…詩織、望夢を産んでくれてありがとう。俺の…俺の子だよな。大変だったよな。1人で頑張ってくれていたのに俺…何もしてあげられなかった。本当にごめん。謝っても許されないことをしてしまった…」

「どうしてっ…」

「もう少し早く会いに来たかったのに、遅くなってごめん。望夢もごめんな。素敵な名前だな…詩織が付けてくれたのか?」

「夢や…希望を持って…未来ある…人生を…送ってほしくてっ…」

「そうか…希望…未来ある人生か……詩織、俺の話を聞いてくれないか?頼む」

「わかり…ました」
混乱しながらも話を聞こうと亘くんの隣に座った。
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