神さま…幸せになりたい
「2人とも頭を上げて」沙代子さんに言われて頭を上げた。
沙代子さんもあやちゃんも目に涙を浮かべて微笑んでくれた。

「ずっとね、詩織ちゃんには幸せになってほしいと思ってたのよ…」そう切り出した沙代子さんは亘くんの目を見て話始めた。

私が札幌で働き始めた頃のこと。いつも悩んでそうな顔してるけど何も声をかけられなかったこと。
そして仕事中に倒れて妊娠してるとわかったこと。結婚するのかと思ったが父親には知らせない、仕事も辞めて違う所に行くと言った私を引き止めたこと。

「一緒に暮らそうと声をかけたの最初に住んでた所は単身者用だったから…私もね…シングルで絢を産んだの。絢が産まれる前に病気で死んでしまったけど…だから詩織ちゃんを助けたかった。望夢がお腹にいる時も頑張ってたのよ。元々頑張り屋さんだったけど、望夢が産まれた時は嬉しかった。なんだか孫ってこんな感じなんだろうって、だからいつか望夢のお父さんに会わせたいって思ってた。だからこうやってまた出会えたのは縁があったからよ。これから支え合って頑張りなさい。私はいつでも応援してる。でも本当に私たちが証人でいいの?亘さんのご両親とか…」

「沙代子さんとあやちゃんがいいんです。望夢と安心して毎日過ごさせてもらえたし、私にとってお母さんとお姉ちゃんだから」

「沙代子さん、詩織と望夢にとって大切なお2人ですから…僕もその一員になりたいので、お願いします」
そう言って頭を下げた。

「ありがとう。書かせてもらうわね」
証人欄に沙代子さんとあやちゃんの名前が埋まった婚姻届を見てまた涙が溢れた。

「これから出しに行くんでしょ?望夢は?保育園はまだお休にしてるでしょ?」

「はい。一緒に連れて行こうと思います」

「2人で行っておいでよ。私休みだし、暇だから。大河もまだ寝てるけど、夕方までいるだろうからさ」

「でも…」

「色々、話もあるでしょ。ゆっくりしていいから。遠慮しなくていいから…ね。」

「じゃあお言葉に甘えて…行ってきます」

「うん。うん。行っておいで、のぞ〜パパとママにバイバイしよー」
あやちゃんが抱っこしようとすると
「イヤー」と亘くんの足元にしがみついた。沙代子さんや、あやちゃんが宥めてもダメだった。置いていかれると思ったのか余計に泣き出してしまった。私達はそのまま望夢も抱っこして
役所に向かった。
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