恋愛観測



「雨、やんだな」
「うん」

 地学室の窓に若干残る雨粒。窓の向こうで素早く動く白雲。急速に開けてくる夕焼け色の空。

「……ね、はなして。ヒガラくんが、満天の星空を嫌いな理由」
「気になる?」
「教えてよ。あたしばっか喋ってる気がするもの」

 請われて、わかったよと、日雀は首を縦に振る。

「こんなこと言ったら笑われるかもしれないけど……怖いんだ」

 俺が天文部に所属しているのは、惑星や天体が好きだからってのだけじゃない。
 プラネタリウムが好きだからさ。偽者の、つくりものの星なら平気なんだ。おかしいだろ? 電球が一つ一つ瞬くと、天井が天空に変化する、その瞬間が好きで。動くことのないまがい物の方が、美しくて。
 だから、天の羊の群れを空で見るのが怖いんだ。毎日が異なるから。流れて消える、生まれて死ぬ、その繰り返しの中で、本物の星は生きているから。
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