ボンドツリー
年月
私とオリヴァーが一緒に植えたオリーブは順調に育っていった。

今では私達よりも少し背丈が低いくらいだ。

植えたころはまだ腰にも届いていなかったのに。

オリーブが大地に根を張ってから3年がたっており、毎日毎日私たちの音色を聞いてくれていた。

そして、そろそろオリヴァーに伝えないといけないことが私にはあった。

そう思いながらも別れを言えない日々が続いていた。

うん、今日こそ言わなきゃ。

別れたくないけど、後悔する前に。

私は肩から羽織ったケープをぎゅっと握った。

「あれ、待った?」

オリヴァーの声だ。

今日は珍しく私の方が先に来ていた。

「待ってないよ」

私は答える。

オリヴァーはニコッと微笑んで私の隣に座り、ヴァイオリンを出し始めた。

「ねえ、オリヴァー。ちょっと話があるの」

勇気を出して私は口を開いた。

「なんだい?話って」

オリヴァーはヴァイオリンの弦を調整しながら言った。

「私ね、この町を離れることにしたの」

オリヴァーは手を止めた。

そしてゆっくりと私の方を見る。

「どうして?親の仕事とか?」

不思議とオリヴァーは悲しそうな顔をしていなかった。

「違うの、あのね」

私は大きく深呼吸をした。

オリヴァーは私をまっすぐ見つめている。

「城下町の方でね、歌の勉強ができることになったの」

オリヴァーは何も言わなかった。

どうして黙っているの、何とか言ってよ。

それとも私のこと、嫌いになったの?

分厚い雲から降ってきた雨がオリヴァーからもらったケープを濡らした。
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