ボンドツリー
決断
「何だこれは?」

僕が自分の部屋に戻ると先客がいた。
父だ。
鬼の形相でオリビアからの手紙を持っている。

「友達からの手紙だけど」

僕は正直に答えた。

こういうところで嘘をつくと良くないことはもう学んだ。

オリビアが教えてくれたから。

父はゆっくりと僕に近づいてきた。

「最近、どうも仕事をさぼっていると思っていたらこんなことをしていたのか。少し前までは勝手に楽器を持ち出してどこかに行き、今度はこんな紙屑のために仕事をさぼっている。少しは手伝おうという気にはならないのか!」

こうなってしまうと父は止められない。

もう昔のパパではないのだ。

何を言っても無駄だということは知っていた。

「ごめんなさい」

父はそれを聞くとオリビアからの手紙と筆記具やらを持って部屋を出ていった。

僕はオリビアへ手紙を書けなくなってしまった。

それから、僕は決断した。

オリビアに会いに行こうと。決行日は父がいないあの日だ。
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