桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
「美桜ちゃん、パレスに行ったんだって?」
 
仁が大きなサラダボウルから、美桜と絵梨の分を取り分けながら聞く。

「うん、そうなの。ガーデンを見せてもらっって。あ、ありがとう」
仁からお皿を受け取りながら美桜が答える。

あの後フォレストガーデンに戻ってから、絵梨と美桜は改めて仁に館内を案内してもらった。

ブティックまでしか知らなかったが、その先には大きな丸い円柱の吹き抜けがあり、周りをドーナツ型に取り囲むようにして様々な店が並んでいた。
活気があって賑やかだ。

「ざっくり言うと一階がレストラン、二階がデパート、三階がスポーツジムやアミューズメント施設、四階が図書室やカフェってとこかな」
 
あまりの規模に驚いて仁の言葉がすんなり入ってこなかったが、絵梨も美桜もたくさんの豪華な施設にテンションは上がりっぱなしだった。

「バーは最上階ね。映画館もあるよ。あと、運動するなら三階のクラタスポーツへどうぞ」
「クラタスポーツ?」
「え、それって仁の?」
「そ!我が倉田グループが出資してるんだ。ウエイトトレーニングの他にもテニスコートやパターゴルフ、卓球とかスケボーなんかも出来るよ。もちろん道具やウエアもレンタル無料!」
 
話を聞くうちに、ようやくこのフォレストガーデンのことが分かってきた。

要するに世界中の色んな企業が出資しているから、全て無料で楽しむことが出来るという訳らしい。

「そういうこと。もちろん土台はウォーリング家と懇意にしていることだけどね。その上で、フォレストガーデンの趣旨に賛同して出資してるんだ。まあ、自社の宣伝にもなるし、ここをいつでも利用できるメリットもある」

なるほど、と絵梨と美桜は頷いた。
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