桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 美桜はまた、いつの間にか深い眠りに落ち、ほら、着いたよ!とゆすり起こされるまで記憶がない。

 うーん…と、まだぼんやりとしか開かないまぶたをこすりながら、なんとか車を降り、目の前の建物を見上げる。

 その二秒後に、美桜は混乱したような声を上げた。

 「え?何これ。ここどこ?」
 
 アレンの家に着いたとばかり思っていたのだが、目の前にはライトアップされた、まるで五つ星の高級リゾートホテルのような豪華な建物が広がっている。

 「ねえ、仁。ここって何?」
 
 美桜と同じ疑問を持った絵梨がそう声をかけるも、
 「うわー、さぶっ。早く中に入ろうぜ」
 そう言って、エントランスの巨大なドアを開けて待っているメイソンの横を、仁は小走りに入っていった。

 「ちょっと待って、荷物は?」
 「私が運びます。さあどうぞお入りください」
 
 メイソンにそう促され、二人はおずおずと中に足を踏み入れた。

 暖かい、そう感じてほっとしたのもつかの間、中を見渡して、またもやその高級な雰囲気に戸惑う。

 「ようこそフォレストガーデンへ」
< 8 / 238 >

この作品をシェア

pagetop