きみと3秒見つめ合えたなら
「美帆、おはよう。
これ、よろしくお願いします。」

 私は、美帆に後輩4人分のチョコを託した。

「はい、はーい。」
 美帆は慣れた感じで回収する。
マネージャーはこういう橋渡しをたくさんするらしい。

 実は昨日、私はあまり寝られていない。

 早瀬くんはモテる...ということはきっと本気の告白もあったかもしれない。

 もしかしたら、誰かと付き合っちゃう?

 それは何となく嫌で。

 だからと言って、今さら私に何ができる?

 バレンタインと男子の組み合わせには無縁だった私は、男子へのチョコの渡し方がわからない。
 
 本気のチョコなんて、恥ずかしくて絶対無理だし。そもそも義理だって、無理。

 それに...
 もう、バレンタインは終わったのに。

 もし、もしも、渡したとして...

 振られたら?
 要らないって言われたら?

 立ち直れない

 要らない...って桐谷くんに言われた。

 あれでも、結構、傷ついたのに。

 ...だから、渡さなくて正解。

 だけど、気軽に、素直に、渡すことができるみんなが羨ましい。

 早瀬くんに、渡したせばよかった...
 いや、やっぱり無理、渡せない。

 ずっと頭の中では、後悔と、これで良かったのだと思い込むことの繰り返しで、頭が痛くなってきた。
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