きみと3秒見つめ合えたなら
 オレたちは電車を降りて、改札を出た。

「相川、合宿中、連絡していい?」
「う、うん。」
今日のオレは自分でも積極的だと思う。

 駅を出た時、権田先生が相川を車で迎えに来ていた。
「相川、大丈夫か?あれ?早瀬?なんで一緒にいるんだ。」

「あ、オレ、県代表の合宿でこっち向かってたら、相川が『東湊』なんかで、オレの車両に乗ってきて。
 変なとこから乗ってきたなって思って聞いたら、体調悪くて駅で休んでたっていうので、心配だったんで、降りる駅も一緒なんで付き添ってました。」

 相川に嘘をつかせたくなくて、オレは権田先生に、まるでそうであったかのように伝えた。

「そうか。早瀬、ありがとな。サッカー場か?早瀬も乗ってけ。」

「いや、オレは...」
「遠慮すんな。」
「ありがとうございます。」
全然、歩いて行くつもりだったが、せっかくなので、乗せてもらった。

 友達と合流して合宿に参加した。
 さすが県代表合宿。初日から結構ハードだった。

その夜、早速、相川にメッセージを送る。

『相川、おつかれー。
無事に合宿合流できた?』

『うん。合流できたよ。
今日は本当にありがとう。』

『相川、元気そうでよかった。
おやすみ。』

『おやすみなさい。』

 すごく、シンプルに終わってしまったメッセージだけど。
 今日1日がギュッとつまっていて、オレは嬉しくて、顔が緩む。

 相川はかわいそうだったが、まさかの展開で、アドレス交換までできた。

 オレ、頑張ったんじゃない?
 いい春休みになりそうだ。

「早瀬、彼女?」
ルームメイトが聞いてきた。


そんなにオレ、顔に出でいたか?
「彼女だったら、いいんだけどなー。」
相川とやり取りしていることを誰かに自慢したい気分だった。


 それからオレは毎日、メッセージを送った。

 あまりに毎日メッセージを送ると、流石に引かれないか...と心配になったが、
相川と少しでも時間を共有したくて、
できるだけシンプルに送ってみた。

 相川も一応、返信してくれていた。

 だが、4日目の夜は返信がなかった。
 ウザかったのだろうか。

 うまくやり取りが続けば、県代表合宿が終わったら、告白しようと思っていた。
それは難しいような気がしてきた。
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