きみと３秒見つめ合えたなら
　4日目の午後の練習が終わってみんなで民宿に戻ろうとした時、私は途中でタオルを忘れたことに気がついた。

　私は一人で競技場に戻ったところ、今日まで一緒に練習した長須高校の男子に声をかけられた。

　長須高校はちょっと素行が悪くて有名なので、あまり関わりたくなかったが、無視するのも怖くて立ち止まった。

「相川さんって、彼氏いるの？」
茶髪にピアス...東高だと退学ものの恰好の彼に聞かれる。
自己紹介が初日にあったけど、例のごとく、私は覚えていなかった。

「い、いないですけど。」
いる、とウソをつけばよかったのに、変なところで正直に答えてしまった。

「そうなんだ〜。1回デートしようよ。」
「え、遠慮しておきます。」　

「一人が嫌だったら、２対２でもいいんだけど。誰か連れてきてもいいよ。」
「いや、あの、私忙しいから...」
どうしよう、逃げたいけど、逃げられない。

「じゃあ、連絡先教えてよ。」
「あの、今、スマホ持ってないし」
「番号はわかるよね、言ってよ。」

　どうしよう...私は立ち尽くすしかできなかった。

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