きみと3秒見つめ合えたなら
 新学期。
 残念ながら、相川と同じクラスになることはなかった。

 幼馴染の井上匠海がオレに耳打ちしてきた。

「相川って、彼氏いるんだってな。
聖斗、早く告らないから、後輩なんかに取られちゃうんだよー。」

「え?」
びっくりして匠海を見る。

「知らなかったのか?結構な噂だけど。」

 ショックが大きくて声にもならない。
後輩って...恭介?

「知らなかった...」
落胆したオレを匠海はなぐさめる。

「女子は相川だけじゃないし。
お前もモテるんだから、前をむけ!」
そんな、すぐに吹っ切れるわけないじゃないか。

 そうか、相川は恭介と。
あぁ、やっぱり、部活が一緒ってズルいよな。チャンスいくらでもあるよな。

 合宿でなんかあったんだろうな。
急に距離を感じたし。

 もう少し早く、距離を詰められていたら、場合によっては告白できたかもしれなかったけど。

 あの時点で、オレの想いを伝えるにはまだ早かったし...。

 権田先生の誘いに乗って転部したらよかった...県代表に選ばれながらも、ちょっと後悔する。



「駅で抱き合っていた」
そんな噂も耳に入り、オレの動揺は半端なく、もう完全に失恋決定。

 駅って...
 大胆過ぎないか?
 相川がそんなこと、できるかな?
 恭介らしいか。あいつはそんなの慣れてるんだろうな。

 その日の部活。
 陸上部をチラッと見たが、恭介はいたが、相川はいなかった。
 あんな噂されたら、部活にも行きにくいよな。

 本当なんだろうか?
 ただの噂...だと信じたい。


 美帆は知ってたのだろうか。 

 オレは部活が終わったあと、後片付けをしている美帆に聞いた。

「美帆、相川と恭介って、つき合ってるらしいな。」

「聖斗...。聞いたんだ。」
美帆は言いづらそうにしている。

「結構な噂らしいじゃないか。匠海から聞いた。」

 美帆は片付けの手を止めて、オレを見る。

「実は、私も噂レベルでしか知らなくて。絢音、言わないし。
だけど、絢音の耳にも入ってきたみたいで、そこから全然元気ないんだよね。
本当に付き合ってるのかなぁ。付き合ってたら、言ってくれると思うから、デマ何じゃないの?って思ってる。」

「それってオレのこと、なぐさめてる?デマじゃないかって。」
美帆に優しさを感じた。

 でも、デマだと思ってたのが本当だったら、2度崖から落とされる...みたいな感じになるんだけどな...
なんて心の中で呟く。

「絢音が何にも言わないから、わかんないってだけ。」
ピシャリと言われた。

「聖斗はとりあえず、部活頑張ってよ。みんな、引っ張って行ってよ。今年はベスト4狙ってんだから。」

「おぅ。」力なく返事したが、確かに今のオレはとにかく最後の部活に全力を尽くすのみ、だった。

 オレの想いはもう相川に届くことはないのだろうか。
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