フィギュアスケート選手同士の不器用な恋
そして大会本番がやって来た。
フィギュアスケートの大会は、ショートプログラムとフリープログラムに分けられ、その合計点数で順位が決まる。
今日は、その女子のショートプログラムが行われる日だ。
怪我の影響でトリプルアクセルを入れられない私は、アクセルの次に難易度が高いルッツを必ず跳ぶ必要があった。
その中でもトリプルルッツとトリプルループのコンビネーションは、跳ぶ選手が少ないため、必ず入れたいと考えていた。
そんな中、直前練習が始まった。
私は、早くにリンクに入り、ルッツを跳ぶための助走に入った。
氷にトウをつき、跳び上がったが、うまく行かなかった。
まだ完全に治ったとは、いえない足が痛さを庇うために力が思った通りに入らないのだ。
何度も挑戦したが、ダブルルッツになったり、派手に転倒したり、失敗が続いた。
そして6分間練習は、終わった。
リンクを降りると、コーチである鬼塚コーチが駆け寄ってきた。
「ゆり、今日は、ルッツを回避しよう。」
予想していた通りだった。
だけど、私は、その現実を受け入れることができず、思わずコーチに反抗した。
「嫌です。アクセルも入れないのにルッツも回避したら、絶対に表彰台に乗れないです。なので跳びます。」
そう言うと、コーチは、険しい顔をした。
「気持ちは、分かるけど、このままルッツを跳ぶと、あの時みたいに怪我をしてしまう。長く続けるための決断なの。」
コーチのその言葉に何も言い返すことができなかった。
2年前に怪我したときもそうだった。
私がコーチの言うことを聞いていれば、今も怪我をせずに世界のトップで戦えていたのかもしれない。
あれは、2年前の世界選手権前のことだった。
グランプリファイナルで2連覇を果たしていた私だったが、その年のグランプリファイナルでは、表彰台に乗ることができなかった。
トリプルアクセルを跳べば、表彰台に乗れる時代の終わりを告げていた。
海外選手が次々とトリプルアクセル、4回転を跳ぶようになり、私は、表彰台に乗れなくなっていた。
そこで私は、表彰台に再び登るために、4回転の練習をはじめることにしたのだ。
来る日も来る日も4回転の練習に没頭していた。
だが、何度練習しても跳ぶことができなかった。
そんな私を見て、あの時も鬼塚コーチが私にこう言ったのだ。
「ゆり、4回転の練習は、やめといた方がいいわ。」
そう言ってくれたコーチにあの時も私は、反抗した。
「先生、海外選手は、4回転を簡単に跳びます。このままではオリンピックで表彰台に乗れません。」
そんな私の悲痛な叫びをみた先生は、私のことを抱きしめながら諭した。
「ゆり。4回転を跳べなくても完璧な演技をすれば、必ず表彰台に乗ることができる。私を信じて。」
そう言ってくれた先生の言葉を信じようと思った。
でもどうしても不安だった私は、練習終わり、先生に内緒で4回転の練習を続けてしまった。
4回転の練習中、派手に転倒した私は、全治2ヶ月の怪我を負った。
今でもあの時の先生の涙を覚えている。
「なんで言ってくれなかったの。あれだけ練習したら駄目って言ったよね?」
だから今回は、先生の言うことを聞こうと思う。
長い間、現役を続けるため。
怪我で逃したオリンピック出場という夢を叶えるため。
フィギュアスケートの大会は、ショートプログラムとフリープログラムに分けられ、その合計点数で順位が決まる。
今日は、その女子のショートプログラムが行われる日だ。
怪我の影響でトリプルアクセルを入れられない私は、アクセルの次に難易度が高いルッツを必ず跳ぶ必要があった。
その中でもトリプルルッツとトリプルループのコンビネーションは、跳ぶ選手が少ないため、必ず入れたいと考えていた。
そんな中、直前練習が始まった。
私は、早くにリンクに入り、ルッツを跳ぶための助走に入った。
氷にトウをつき、跳び上がったが、うまく行かなかった。
まだ完全に治ったとは、いえない足が痛さを庇うために力が思った通りに入らないのだ。
何度も挑戦したが、ダブルルッツになったり、派手に転倒したり、失敗が続いた。
そして6分間練習は、終わった。
リンクを降りると、コーチである鬼塚コーチが駆け寄ってきた。
「ゆり、今日は、ルッツを回避しよう。」
予想していた通りだった。
だけど、私は、その現実を受け入れることができず、思わずコーチに反抗した。
「嫌です。アクセルも入れないのにルッツも回避したら、絶対に表彰台に乗れないです。なので跳びます。」
そう言うと、コーチは、険しい顔をした。
「気持ちは、分かるけど、このままルッツを跳ぶと、あの時みたいに怪我をしてしまう。長く続けるための決断なの。」
コーチのその言葉に何も言い返すことができなかった。
2年前に怪我したときもそうだった。
私がコーチの言うことを聞いていれば、今も怪我をせずに世界のトップで戦えていたのかもしれない。
あれは、2年前の世界選手権前のことだった。
グランプリファイナルで2連覇を果たしていた私だったが、その年のグランプリファイナルでは、表彰台に乗ることができなかった。
トリプルアクセルを跳べば、表彰台に乗れる時代の終わりを告げていた。
海外選手が次々とトリプルアクセル、4回転を跳ぶようになり、私は、表彰台に乗れなくなっていた。
そこで私は、表彰台に再び登るために、4回転の練習をはじめることにしたのだ。
来る日も来る日も4回転の練習に没頭していた。
だが、何度練習しても跳ぶことができなかった。
そんな私を見て、あの時も鬼塚コーチが私にこう言ったのだ。
「ゆり、4回転の練習は、やめといた方がいいわ。」
そう言ってくれたコーチにあの時も私は、反抗した。
「先生、海外選手は、4回転を簡単に跳びます。このままではオリンピックで表彰台に乗れません。」
そんな私の悲痛な叫びをみた先生は、私のことを抱きしめながら諭した。
「ゆり。4回転を跳べなくても完璧な演技をすれば、必ず表彰台に乗ることができる。私を信じて。」
そう言ってくれた先生の言葉を信じようと思った。
でもどうしても不安だった私は、練習終わり、先生に内緒で4回転の練習を続けてしまった。
4回転の練習中、派手に転倒した私は、全治2ヶ月の怪我を負った。
今でもあの時の先生の涙を覚えている。
「なんで言ってくれなかったの。あれだけ練習したら駄目って言ったよね?」
だから今回は、先生の言うことを聞こうと思う。
長い間、現役を続けるため。
怪我で逃したオリンピック出場という夢を叶えるため。