ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません
茶髪で短髪の男子生徒が、背中を丸めながら肩で風を切って教室の中を歩く。
言葉づかいも巻き舌で話すし、目を細めて睨んでくる。
制服のズボンを腰履きで着崩し、先生たちからも睨まれてる不良男子。
「なあ地味子ちゃん、オイラの名前を知ってるか~い?」
私の横に立ったまま、顔を近づけて話してくる。
「谷崎 悟(たにざき さとる)くん、ですよね……」
顔を下に向けたまま、私は小声で不良男子の名前をつぶやく。
「うれしいぜ、地味子ちゃんにまで名前を知られてるなんてよ~」
すごく目立つ人なので、名前だけは覚えてた。
この町の暴走族の総長らしいと、周りにいた子が噂してる話しを耳にしていたから。
「クラスメイトに、暴走族の人がいるなんて……」
思わず私の心の声が口から漏れてしまったよ。
谷崎くんは、顔を俯かせる私の耳に口を近づけて小声で言ってくる。
「へぇ~、龍堂みたいな奴でもオイラのこと知ってんだ……」
その直後、谷崎くんは顔を上げてゲラゲラ高笑いを始めた。