【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

番外編 王国の危機じゃないですか?


 結婚式を間近に控えた、ある日の朝。

 ランティスは、持ち前の行動力と権力と財力と知力すべてを総動員して、ロザリス公爵家のトップを挿げ替えてしまい、フェイアード侯爵家にはようやく平和が戻りつつあった。

 その断罪劇は、しかし王都の住民たちに知らされることもなく、秘密裏に行われた。
 騎士団、侯爵家、王家の協力。それは、新しい貴族内の勢力図を意味していた。

 けれど、まだまだ危険一杯という理由で、メルシアは相変われずフェイアード侯爵家に暮らしている。

 そして、今朝目覚めてみたメルシアは、ランティスの様子がおかしいことに気がついた。

「っ……?!」

 近い距離。否、近すぎる距離。

「ランティス様?」
「なに、メルシア。好き」
「……?!」

 目覚めの推しの破壊力。
 確かにランティスは、目覚めた時にラティみたいに素直に甘えてくることがある。
 だから、今日だってそうに違いないとメルシアは考えた。

 けれど、最初に感じた違和感が、やはり間違いではなかったことにメルシアが気がつくまで、それほど時間はかからなかった。

「ランティス様」
「なに、可愛いメルシア」
「えっと、そろそろ目を覚まされては……」
「え? 何言ってるのメルシア。もっと近くに来て?」
< 213 / 217 >

この作品をシェア

pagetop