【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。


「えっと、でも、その言い方だと、ずーっと、私のことが好きだったみたいに聞こえてしまいますよ?」
「事実だ」
「えっ? だって、最後に会ったのは、幼いあの時で……。もう一度お会いしたのは、ベルトルト様に助けられたあの時ですよね?」

 長い沈黙が、訪れる。

 おそらく、まだランティスには、言えていないことがある。さすがに、メルシアにすら、そのことは察せられる。

「くっ。そんな目で見ないでくれ! メルシアのことが、ひと目見たくて、騎士になったなんて、引かれても当然だ!」
「えっ」

 事実、フェイアード侯爵家は、王の剣と呼ばれ、代々優秀な騎士を輩出している。
 だが、嫡男であるランティスは、騎士になることを義務付けられてはいなかった。

 それほど、誰かと争うことが好きではなかったランティスは、このままフェイアード侯爵家の後継者教育を受け、侯爵家を継ぐつもりだった。
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