【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編その2「バー・アズリッシモにて」
「ん? ふたりで来たってことは……」
 テーブル席のお客さんにカクテルを運んできた栗原さんは、亮介さんに問いかけた。

「ああ、ようやく念願が叶ったってこと」
亮介さんはわたしの顎をつかみ、軽くキス。
「亮介さんったら、もう……」
 
「いきなり、見せつけてくれるな」

 チョコレートの乗った皿を置きながら、栗原さんは片方の口角を上げ苦笑した。
「ハイネケンくれる?」と亮介さん。
 栗原さんは、亮介さんの前にビール瓶を置き、わたしに「何にしますか?」と訊いた。
「えーと」
 ほとんどバーに足を運んだことがないので、何を頼めばいいのかわからず迷ってしまう。
 察した亮介さんが「おまえが選んでくれればいいよ。女性が好みそうなやつ」と助け船を出してくれた。

「了解。酒は強いんだっけ?」
「いえ。そんなには」
 栗原さんは軽くうなずくと、グラスに手を伸ばした。
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