【甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。】番外編その2「バー・アズリッシモにて」
 長い黒髪を無造作にまとめ、黒シャツとジーンズをさりげなく着こなしている。
 シェイカーを振る手つきが鮮やかで、あまりにもカッコいい。
 彼をイケメンと言って、異を唱える人はいないだろう。

 前も思ったけれど、このふたり、学生時代には、それはモテたことと思う。
 当時、同じ学校に通っていたとしても、きらびやかすぎて、わたしは近づくことさえできなかったはずだ。

「お待たせ。月並みだけど〝ミモザ〟です。どうぞ」

「オレンジのカクテルですか?」
「オレンジジュースをシャンパンで割ったもの。度数もそれほど高くないから、飲みやすいと思いますよ」
「いただきます」

 フルートグラスに扇形にカットしたオレンジが飾られている。
 口に含むと、フルーティーな香りが広がり、そこにシャンパンのほのかな苦みも加わって、さわやかな飲み心地だった。
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