国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 そしてその手紙の内容で、ジェシカはアルカンドレの誕生パーティが近々開かれることを知った。彼女が宰相に問い合わせ、宰相が各大臣に尋ねたところ、外交大臣がそのようなものを受け取っていたが、連日の激務ですっかり失念してしまった、という言い訳をされた。
 だからこそ、今回の外交という名の初顔合わせは絶対に失敗させてはならない、とフローラは思っていた。
 啖呵を切るかのようにエセラに放った一言。ただの騎士ではない、というその一言。
 フローラは貴重な魔法騎士。魔法騎士でありながら、護衛騎士として任務についているため、その彼女の力についてはあまり知られていない。いたって普通の魔法騎士。武器に攻撃魔法を付与して、それで魔獣を討伐する、という魔法騎士。
 それは、このアダムとあのブレナンが巧妙に隠しているからだ。彼女の力を周囲に知られてしまうのは危険である、と判断したらしい。それにフローラ自身、自分にどれだけの力が隠れているのかもわからない。クリスは何かしら気付いている。だけど、それを教えてはくれない。魔法は教えてくれるけれど、肝心なところは教えてくれない。
 だけどここで今回の外交の件だ。
 もしかしたら、クリスは反対するだろうか。危険だから、行くな、と。
 いや、彼はそのようなことを口にするような男ではない。いつでもそっとフローラの背中を支えてくれる。だからこそ、フローラは彼から自分の力について聞き出す必要があると思っていたし、さらにもう一つ、無理なお願いもしてみるつもりだった。
 それも全て、ジェシカを守るために。この外交を成功させるために。
 ジェシカの気持ちを大事に大事に育ててあげたいから。
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