国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 エセラが目を通しながら尋ねるが、エセラ自身はそれが本物か偽物かというのはまったくわからない。するとジェシカが手を差し出し、エセラがそれをジェシカに手渡した。
「うーん、私にもわからないわ」
「そう、ですか」
 フローラもなぜ偽物だと思ったのだ、と問われると、なんとなくとしか答えようがない。だから、この書面の指示には従わなければならないのだろう。
「また、山越えですかね」
 フローラが言うと、ジェシカはぷーっと頬を膨らませた。
「楽しみにしてたのに。いろんな町を見て回るの」
「山越え、するつもりなの?」
 思わずエセラは、そうフローラに聞いていた。
「この書面が偽物と証明できない以上、従うしかないのでは?」
 エセラは肩で大きく息を吐いたが、フローラの言う通りである。だが、エセラには一つだけ心配事があった。
「それよりも、フローラ。大丈夫なの?」
「何が?」
「ま、その、体力かな? あなたの」
「なんとか。ここで少し休ませてもらったから、帰りもなんとかしてみる」
 そんな二人の会話を聞いていたジェシカは、やはり行きに魔獣と遭遇しなかったのはこのフローラのおかげなんだな、ということをなんとなく察していた。
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