国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
20.彼女の帰還
 ジェシカが予定よりも早くデトラースに戻ってきたことに、国王や宰相は驚きを隠せないでいた。つまり、帰りもあのアリーバ山脈を越えてきた、ということだ。それでも無事に行って帰ってきたことに対しては、心から安堵していた様子。
 エセラが事情を説明すると、宰相は難しい表情を浮かべる。
 やはりそのような予定は無かったようだ。書面のサインが外務大臣であったため、彼に確認してもらったところ、そんな書簡を送った記憶は無い、それにサインが違う、と言い張っていた。
 ようするにフローラのなんとなくが当たっていた、ということだ。
 そのフローラはものすごくクリスに会いたい、と思っていたのだが、身体が重くて彼の元まで行く気力が無い。アダムに今回の件を報告したらその身体を引きずるようにして自宅へと戻った。こういうときは、家が近くて良かったと思える。
 自宅に戻り、懐かしい寝台が目に入った時には、着替えもせずにそのままそこに倒れ込んでしまった――。

****

 クリスはジェシカが戻ってきたということを、ノルトから聞いた。律儀に彼がクリスの研究室を訪れて報告してくれたのだ。ジェシカが戻ってきた、ということはつまり、フローラが戻ってきた、ということだ。
 だが、クリスが思っていたよりも早い日程だ。ということは、恐らく帰りもアリーバ山脈を越えてきたのだろう。素直なフローラのことだから、帰りも魔獣除けのために魔力を放出していたに違いない。
< 147 / 254 >

この作品をシェア

pagetop