国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 ブレナンの話は推測ではなく、事実ではないかという思いがクリスにはあった。
「ブレナン殿はいつ、それにお気づきになられたのですか」
「ああ、貴殿から相談を受けたとき、だな。聖人(きよら)がいなくなった時期と、フローラの父親が騎士団を辞めた時期と、そしてフローラの生まれた時期と。考えたら、全てが繋がった」
「つまり、彼女の父親が聖人(きよら)を匿っていた、ということですか?」
「恐らく」
「ですが、二年もの間、探していたのですよね。その聖人(きよら)を。よく、誤魔化せましたね、としか言いようがないのですが」
「まあ、これも推測になるが」
 そこでブレナンは両手を組み合わせた。何かに祈るかのように。
「すでに聖人(きよら)はその力を失ってしまったのではないだろうか。だから、人目のつかないところでひっそりと暮らし、力を探られても気付かれなかった」
「なるほど」
「もし、クリス殿がフローラと結婚する気でいるのであれば。どうか彼女を守ってもらいたい。私の願いはそれだけだ。二十年前と今、この国の情勢は違うが、それでも二十年も存在しなかった聖人(きよら)だ。それを利用しようとする輩が出てくるかもしれない」
「言われるまでもなく」
「クリス殿ならそう言うと思っていた」
 ははっとブレナンは笑った。
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