国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「あ、はい。アリハンス滞在時に届いた書面ですね」
「そうだ。外務大臣のサインがあるから、彼に確認したらこんなものを送った覚えはないという答えだった」
 フローラがいる前でも宰相と外務大臣がそんなやり取りをしていたことを思い出す。
「魔導士団長のノルト殿に()てもらったところ、これにも闇魔法が付与されていることがわかった」
 ブレナンがノルトの方に視線を向けると、苦々しい表情でノルトが頷く。苦々しい表情の原因は先ほどから話題にあがっている「闇魔法」だろう。
「我々が知る限り、今、闇魔法を扱えるような者はいない」
 ノルトのその言葉に、フローラの心の奥にざわりと風が走った。恐らくこのノルトはフローラの力を知っている。だが、あえてそれに触れないのだ。国王にさえも知られてはならない力であるということを、フローラは改めて思い知った。
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