国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「その……。私たちの結婚は、ジェシカ様が隣国に嫁がれることが決まってからでもよろしいですか?」
 フローラが彼の顔を見上げると、その眉がピクリと動いた。その視線はフローラに向かわず、どこか違うところを見据えている。
「まったく、あの王女は。一体いつまで私たちの邪魔をすれば気が済むのでしょうかね」
 相変わらずな物言いである。
「あの王女がこちらにいるうちは、私たちが結婚したとしても、ことごとく邪魔をされそうな気がするのです。ですから、結婚をするのであれば、あの王女が嫁がれてからの方がいいですね」
「クリス?」
 フローラはクリスの言葉の真の意味を考える。
「何か、問題でも?」
「いえ。ありがとうございます」
「私は本当のことを言っただけですが?」
 そうやってクリスは、いい人になろうとしない。フローラはそれに気づいている。
 クリスはフローラを抱いている手に力を入れると、彼女を抱き寄せた。
「それに。何も結婚をしなくても、こうやってあなたと共に時間を過ごすことはできますから」
(あ、これはクリスに潰される……)
 フローラはそう察した。そう思いながらも彼を受け入れてしまう自分がいる。
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