国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 一時間もあれば、フローラは彼女から必要な情報を聞き出してくれるだろうか。
「副団長のお相手って、あの方だったんですね」
 彼女のその言葉にクリスは眉根を寄せる。
「だって、副団長の彼女を見る顔、いつもと違いますもん。あの人からはあんまり魔力を感じませんが。それで副団長のお相手が務まるのか不思議なところですが」
 さすが特級魔導士の彼女である。フローラの魔力を探って感じることができるようだ。
「で、あの方があの闇魔法から話を聞いてくれる、と。さっきまでいた騎士は、全然相手にされてませんでしたからね。あの闇魔法、何も話さなかったみたいだし」
 どうやらブレナンの言っていたことは的を射ていたようだ。
 この部屋には監禁部屋を覗くための小窓がいくつかあって、そこから隣の部屋の様子を探ることができる。
 今、フローラはあの侍女を見下ろしている。侍女は床にお尻をつけて座り、両膝を抱えていた。その前に立っているのがフローラ。さらにその数歩後方に女性騎士。この女性騎士は入り口付近に立って、その部屋の出入り口を監視しているのだ。
 おや、とクリスは思った。あの侍女、どこかで見たことがある、と。
 侍女だからどこかですれ違ったかもしれない。だけど、そうじゃない。どこだろうか、と思い出そうとしたとき、フローラが彼女に声をかけようとしていた。
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