国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 もどかしくてもクリスには何もすることができない。ここで下手にクリスが手を出すと、二人の闇に飲まれる可能性もある。
 そんな二人をじっと見守ることしかできない。
 先に膝をついたのはナッティだった。
「フローラ。彼女の魔力を封じ込めるのです。あなたなら、できます」
 またクリスの口からは、普通の魔導士ではできないような指示が飛び出してきた。
 魔力を封じ込める。
 それは聖人(きよら)だからできる術であることをクリスは知っていた。
「恐らく使うことは無いとは思いますが、知っておいた方がいいでしょう」と。数ある魔導書の中から一番分厚くて一番古そうな物をフローラに手渡していたのだ。
 全属性の魔力を解放したフローラは、それで目の前のナッティを包み込む。身構えているフローラの額にもうっすらと汗が滲んできた。膝をついているナッティは苦しそうに顔を歪み、そして自分の胸を押さえる。
「う、うぅ……」
 呻くような声を漏らしたナッティは、その場に倒れた。
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