国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「で、実際のところ、どうなんだ? 彼女とは」
「彼女というのは、どの女性を指しておられますか?」
 はあ、とノルトはため息をつく。このクリスという男はこういう男だ。何年も彼を部下にしてきているからわかるのだが。それでも、こんな彼をつつくのがノルトの楽しみでもあった。
「フローラ嬢のことだ」
「あなたの口から、彼女の名が出てくるのを聞くのは、なぜか不快ですね」
 ほう、とノルトは唸った。
「で、実際のところ。フローラ嬢とはうまくいっているのか?」
 ノルトがあえて彼女の名を口にするのは、そのタイミングでクリスの口元が歪むのが面白いからだ。
「うまくいくも何も、彼女とはまだ一度しかお会いしておりません」
「一度って、一回だけってことか?」
 動揺してしまったノルトはわけのわからないことを口にしてしまった。
「ええ。あのとき、彼女を紹介されたとき以来、お会いしておりませんが」
 紹介されてから、十日が経っている。だが、本当にあれ以降、クリスはフローラと会っていない。
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