国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「まあ、そのお父さんではなく、ブレナンがだ。お前が無理やりフローラ嬢を抱いたのではないかということで、苦情を入れてきた」
「強姦ではありません。合意の元ですとお伝えください」
「一応な。俺からはそう伝えておいたが、どうやらフローラ嬢が別な騎士と付き合ってたっていうのは、あの騎士団では周知の事実だったらしいな」
「でしたら、それと別れて私と付き合っていることを公表してください。むしろこちらは国の政策の一つですからね。陛下からの命令ですとお伝えください」
 珍しく、クリスが鼻息荒く、ふんと言った。そして陛下からの命令であると口にした彼ではあるが、今では彼女に会うのも彼女を抱くのも、自分の意思だ。むしろ、彼女を他の男には渡したくない、という思いもある。
「それは、お前はいいかもしれんが、彼女は嫌がるだろう? まあ、気付いたのはあのブレナンだったからな、俺からそれとなく説明しておいたが。まあ、気をつけろってことを言いたいだけだ」
 そう言われても、一体何に気を付けるべきなのか全く心当たりのないクリスは「そうですか」としか答えることができなかった。

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