国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「ジェシカ様には近々、隣国のアリハンスへ行くという話が出ている」
「え?」
 フローラの目がピクリと動いた。
「そしてその護衛として、フローラ、君の名前があがるだろう」
 はい、とフローラは頷く。
「フローラ。君の魔力を()てもいいか?」
 唐突にブレナンからそのようなことを聞かれ、フローラは困惑した。
 この魔力鑑定というものを、いまだに行ってもらったことがないからだ。以前、クリスにも同じようなことを言われたのだが、機会を逃してしまったためか、まだクリスにさえも鑑てもらったことがない。
 これを受け入れていいものかどうかの判断がつかない。だが断る理由も見つからない。
「お願いします」
 そう言うと、ブレナンは身体をフローラの方に向け、両手を出すように言ってきた。
 フローラも身体をブレナンの方にむけると、おずおずと両手を差し出した。手のひらを上に向けるように言われたため、それに従う。そこにブレナンが手の平を下にして、その手を重ねた。
 不思議な感覚だった。ブレナンの手の平から温かい何かが流れ込んでくるような。それが手の平に突き刺さるような。
 ふぅ、とブレナンが大きく息を吐いた。額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
「フローラ。できたら私にクリス殿を紹介してもらえないだろうか」
 いつも穏やかなブレナンの表情が曇っていたため、フローラは頷くことしかできなかった。
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